この記事を読むと、中小企業がChatGPTの社内ルールを最小限で作る手順が分かります✨
- 💬 従業員が個人の判断でChatGPTを使い始めていて、情報漏えいが不安
- 💬 禁止したいが、業務で便利に使っている人を止めきれる気がしない
- 💬 ルールを作りたいが、何をどこまで決めればいいのか見当がつかない
全面禁止より「最小ルール」を先に決める理由
結論から言います。ChatGPTの全面禁止は、社内の情報を守る方法として弱いです。
正直に言うと、「情報漏えいが怖いから一律禁止」という判断は、従業員が10名前後の会社では当てはまりません。禁止しても、使っている本人は止まらないからです。会社に知られない私物のスマホや個人アカウントへ移るだけで、何を入力しているのか経営者から見えなくなります。この「会社が把握していないAI利用」をシャドーAI(=会社の許可や管理の外で使われるAI)と呼びます。
ガートナージャパンが2026年6月に発表した調査では、シャドーAIへの有効な対策が取れていない国内企業は7割超でした(日本経済新聞の報道による)。大企業ですらこの状況です。
だからうちでは、禁止の相談を受けても、まず「使ってよい範囲」と「入れてはいけない情報」を1枚に書くことを最初に提案しています。
逆に言えば、「従業員が黙って使っているかもしれない」と気づいた今が、ルールを作る一番いいタイミングです。まだ事故は起きていません。作るのは分厚い規程ではなく、A4で1枚。それだけで、状況はかなり変わります。
ChatGPTの社内ルールが必要な理由と、公的ガイドラインの位置づけ
以前、兵庫県宝塚市の税理士事務所からご相談をいただいたことがあります。スタッフ4名のうち3名が、それぞれ別々にChatGPTを使っていました。顧問先へのメール文面や、決算内容の説明文づくりに使っていたそうです。所長が気づいたのは、スタッフ同士の雑談がきっかけでした。
大阪府高槻市の社労士事務所からも、似たご相談をいただきました。こちらは「就業規則の条文案を、入社前の資料ごとChatGPTに貼っている人がいるらしい」という不安でした。
なぜ、士業(税理士・社労士・行政書士・司法書士など)の事務所ほど、この問題が重くなるのでしょうか。理由は、扱う情報のほとんどが顧問先や依頼者の秘密だからです。税理士には税理士法第38条で、業務上知り得た秘密を漏らしてはならない守秘義務があります。法律事務所や会計事務所、専門家全般が同じ性質の情報を預かっています。
公的な資料としては、次の3つを押さえておけば足ります。
- ・ 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(2023年6月2日) — 本人の同意なく個人データを含む入力をし、それが回答の出力以外の目的で扱われる場合、個人情報保護法に違反する可能性があると注意喚起している
- ・ 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン」 — 個人情報・知的財産・機密情報は、それぞれの法令に沿って扱うことを求めている。2026年3月31日に第1.2版が公表されている
- ・ 各士業の団体が出している会員向けの案内 — 税理士なら日本税理士会連合会など。所属団体の最新の案内を確認する
⚠️ 何が違法になるかは、入力する内容や契約条件で変わります。この記事は法的判断ではありません。個別の判断は、上の公式ページや、顧問弁護士・所属団体にご確認ください。
中小企業向け ChatGPT社内ルールの最小セット5項目
ルールは5項目で足ります。それぞれ、一文で言い切れる形にしておくのがコツです。
1. 入力してはいけない情報を決める
一番大事なのは、「入れてはいけないもの」を書くこと。ここが曖昧だと、従業員は判断できず、結局こっそり使います。
| 区分 | 例 | 扱い |
|---|---|---|
| 入力しない | 顧客名・住所・マイナンバー・口座番号・決算書の実数値・契約書の全文 | どんな場合も入れない |
| 加工すれば可 | 相談内容の要約、金額を丸めた事例 | 個人や会社が特定できない形にしてから |
| そのまま可 | 公開済みの法令文・自社ブログの下書き・一般的な質問 | 自由に使ってよい |
ここで言う個人データとは、氏名や生年月日などで特定の個人を検索できるように整理された情報のことです。
2. 使ってよい業務を先に示す
「使うな」ではなく、「これなら使っていい」を先に書きます。たとえば、メール文面のたたき台、公開情報の要約、社内向け資料の言い回しの整え、アイデア出し。プロンプト(=ChatGPTへの指示文)の書き方はChatGPTのプロンプト活用術で解説しています。使ってよい業務が見えると、従業員は迷わず、グレーゾーンに手を出しにくくなります。
3. 出力の確認責任は「使った人」に置く
ChatGPTの回答には、もっともらしい間違いが混ざります。だから、出力を外へ出す前の確認は、使った本人と承認者の責任と決めておきます。顧問先へ送る文書や、法令・税額に触れる内容は、必ず人の目を通してから。「AIが言っていた」は言い訳にならない、と一文書いておくだけで意識が変わります。
4. 利用アカウントを会社で把握する
個人のメールアドレスで作ったアカウントは、会社から見えません。退職した人の履歴も残ります。そこで、業務で使うアカウントは会社が把握できるものに限ると決めます。アカウントの一覧と、管理する人を1名決めておくだけで十分です。
5. 学習に使われない設定を確認する
OpenAIの公式ヘルプによると、ChatGPT Business・Enterpriseなど法人向けプランでは、既定で入力内容がモデルの学習に使われません。一方、個人向けのアカウントでは、内容が学習に使われることがあり、設定で「モデルの改善」をオフにするオプトアウト(=学習に使わせない設定)が必要です。ただし、設定名や仕様は変更されるので、導入時に最新の公式ヘルプを確認してください。
これで、入力内容が意図せず学習に回る不安を、設定の段階で小さくできます。設定をオフにしても、「機密は入れない」ルールの代わりにはならない点には注意が必要です。
ルールを作る3ステップ
ステップ1:使っている人を責めずに、現状を聞く
最初にやるのは、従業員へのヒアリングです。「誰が、何のために、どのアカウントで使っているか」を聞きます。叱らないことを先に伝えてください。責めると、次からは隠されます。IT導入で現場が抵抗する理由はIT化が進まない本当の理由は「人」にあるで詳しく書いていますが、AIでも構図は同じです。
ステップ2:5項目をA4で1枚にまとめる
ヒアリングで出た実際の使い方を見ながら、上の5項目を1枚にします。長くする必要はありません。目安は、従業員が30秒で読み切れる分量です。専門家の目が必要なら、条文の解釈は顧問弁護士などに確認してもらいます。
ステップ3:1か月試して、直す
完璧なルールは最初は作れません。まず運用して、迷った場面を集めます。「この場合は入れていいのか?」という質問が出たら、その答えを1行ルールに足します。
事例:宝塚市の税理士事務所が1枚のルールで一本化した話
先ほどの宝塚市の税理士事務所(駅から歩いて数分の、白い外壁のビルの2階にある事務所)で、実際にどう進めたかをご紹介します。
- ・ 業種・規模:税理士事務所、スタッフ4名。個人事業主から小規模法人まで顧問先を持つ
- ・ 課題:4名のうち3名が、それぞれ個人アカウントの無料版ChatGPTで顧問先向けの文面を作成。誰が何を入力しているか、所長は把握できていなかった
- ・ 解決内容:ヒアリングで使い方を洗い出し、5項目のルールをA4で1枚に整理。法人向けプランの契約と、事務所管理のアカウントへの一本化を支援した
- ・ 結果:ルール運用の開始から47日後、スタッフ4名全員が事務所管理のアカウントに移行。顧問先名を含む入力は、加工してから使う運用に変わった
この事務所で効いたのは、禁止ではなく「使い方の見本」を渡したことです。月次報告メールの下書きなど、使ってよい業務を3つ示したところ、スタッフから「これなら安心して使える」という声が出たそうです。
私たちは兵庫・大阪・京都を中心に、士業をはじめ19業種のホームページ制作やシステム開発、AI導入のご相談をいただいてきました。実際にお手伝いしていると、ルール作りで詰まる原因は、条文よりも「現場の使い方を誰も知らない」ことのほうが多いと感じています。
現場の落とし穴:有料プランにすれば安心、ではない
よく「会社で有料プランを契約すれば安全」と言われます。ところが実際に士業や小規模事業所の相談に入ると、契約したのに、無料版を個人のスマホで使い続ける人が残ります。理由は単純で、会社のアカウントにログインする手間より、いつものアプリを開くほうが早いからです。
Gmailの個人アカウントでログインしたChatGPTのアプリが、スマホに残っている。これが、どの事務所でもルールをすり抜ける入口です。契約の確認だけで終わらせず、利用アカウントの一覧づくりまでセットでやると、抜け穴はかなり塞げます。
よくある失敗:分厚い規程を作って、誰も読まない
インターネット上のテンプレートを丸ごと持ってきて、20ページの利用規程を作る。これが一番多い失敗です。従業員は読まず、判断に迷った場面でも参照されません。担当者名だけ決めて、権限も一覧も持たない状態も同じです。「規程を作った」と「使われている」は別の話です。
もう1つの失敗は、禁止事項だけを並べることです。「入れてよいもの」を書かないと、従業員は自分で線を引き、結局こっそり使います。
予算も時間もないなら、まずこの3つだけ
5項目すべてを最初から整える必要はありません。時間が限られているなら、最初はこの3つだけで十分です。
- 💡 入力してはいけない情報を、具体例つきで書き出す
- 💡 業務で使うアカウントを会社が把握できるものに絞る
- 💡 学習に使われない設定を確認する
残りの「使ってよい業務」と「確認責任」は、運用しながら足していけます。
あなたの会社は大丈夫?チェックリスト
- ✅ 従業員が、どのアカウントでChatGPTを使っているか把握していない
- ✅ 「顧客名や契約書は入れない」と、文書で伝えたことがない
- ✅ 入力内容がAIの学習に使われる設定かどうか、確認していない
- ✅ AIが作った文章を、顧客に送る前に誰がチェックするか決まっていない
2つ以上当てはまるなら、最小ルールを作るタイミングです。
弁護士・税理士・社労士・行政書士など士業のホームページ制作・システム開発をお考えの方へ
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集客のポイントや導入事例など、士業ならではの課題と解決策をまとめていますので、ぜひあわせてご覧ください。
AIで書類処理を進める方法は、税理士事務所がAIで書類処理を自動化する3つの方法にまとめています。
まずはここから始めてみませんか?
自分で改善したい方へ
まずは従業員に「ChatGPTを仕事で使っているか」を責めずに聞くところから始めてみてください。その答えが、ルールの土台になります。
プロに相談したい方へ
「社内ルールを作りたいが、どこまで決めればいいか分からない」という方は、お気軽にご相談ください。現状の課題と改善ポイントを、専門用語なしで分かりやすくお伝えします。
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